中小企業診断士試験の暗記系の科目である経営法務。
近年は合格率が低く推移している科目で、1問あたりの点数が4点と非常に重たいウエイトとなっているのも特徴です。
本記事では、そんな経営法務についてまとめていき、勉強法について詳しく解説していきます。
【本記事の内容】
・経営法務の概要と出題範囲・合格率について
・経営法務の合格に必要な勉強時間について
・経営法務の勉強法について
元銀行員で、現在はベンチャー企業で中小企業診断士の資格を活かしながら、コンサルティングを行っています。
26歳で中小企業診断士2次試験に合格・登録。
<1次試験の成績>
・企業経営理論 60点
・財務会計 88点
・運営管理 52点
・経済学・経済政策 92点
・経営法務:60点
・経営情報システム:52点
・中小企業経営・政策: 78点
【合計得点】482点
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中小企業診断士 経営法務の概要
経営法務の試験概要
科目 | 試験時間 | 配点 |
経済学・経済政策 | 60分 | 100点 |
財務・会計 | 60分 | 100点 |
企業経営理論 | 90分 | 100点 |
運営管理 | 90分 | 100点 |
経営法務 | 60分 | 100点 |
経営情報システム | 60分 | 100点 |
中小企業経営・政策 | 90分 | 100点 |
経営法務は中小企業の企業経営に関係する法律に関する知識を問われる科目です。
中小企業診断士試験の2日目の日程で試験時間は60分、配点は100点となります。
また、経営法務の科目単体での合格ラインは60点となります。
経営法務の科目設置の目的
創業者、中小企業経営者に助言を行う際に、企業経営に関係する法律、諸制度、手続等に関する実務的な知識を身につける必要がある。また、さらに専門的な内容に関しては、経営支援において必要に応じて弁護士等の有資格者を活用することが想定されることから、有資格者に橋渡しするための最低限の実務知識を有していることが求められる。このため、企業の経営に関する法務について、以下の内容を中心に基本的な知識を判定する。
※令和3年度中小企業診断士第1次試験案内より引用
法律の専門家の弁護士である弁護士や司法書士ほどの知識が求められるわけではなく、最低限の基礎知識を身につけることによって、クライアントから相談があった際に専門家への橋渡しできるようにするために学習していきましょう。
経営法務の出題範囲
出題範囲 | 出題内容の一例 |
会社設立や倒産 | ・法人や個人の事業開始に関する知識(登記/届出関連) ・M&A関連知識 ・倒産関連の手続きに関する出題等 |
知的財産権 | ・著作権/実用新案権/意匠権/商標権に関する知識 ・音楽やキャラクター、ソフトウェアのライセンス契約等 |
契約関連 | ・不動産や動産の売買 ・契約当事者の権利関係、契約の有効要件等 |
企業活動に関する法令 | ・民法/会社法関連の知識等 |
資本市場に関する手続 | ・株式公開手続きについて ・有価証券報告やディスクロージャー関連知識等 |
上記が経営法務の出題範囲となります。
実際の問題された問題がどのような問題か見ていきましょう。
実際の問題された問題がどのような問題か見ていきましょう。
【問題】
令和3年 第2問
民法が定める消費貸借に関する記述として、最も適切なものはどれか。
なお、「民法の一部を改正する法律」(平成 29 年法律第 44 号)により改正された民法が適用されるものとし、附則に定める経過措置及び特約は考慮しないものとする。ア 金銭の消費貸借契約がその内容を記録した電磁的記録によってなされたとしても、その消費貸借は、諾成的消費貸借契約としての効力を有することはない。
イ 書面により金銭の消費貸借契約を締結した場合、貸主から金銭を受け取る前に借主が破産手続開始の決定を受けたときは、当該消費貸借は、その効力を失う。
ウ 書面により金銭の消費貸借契約を締結した場合、借主は、貸主から金銭を受け取る前であっても、当該契約を解除することはできない。
エ 書面により金銭の消費貸借契約を締結した場合、当該契約書に返還時期を定めたときは、借主は、当該返還時期まで、金銭を返還することはできない。
【解答】イ
【問題】
令和3年 第9問
意匠登録制度に関する記述として、最も適切なものはどれか。ア アイスクリームの形状は時間の経過により変化するため、意匠登録できる場合はない。
イ 意匠登録出願人は、意匠権の設定の登録の日から 3 年以内の期間を指定して、
その期間その意匠を秘密にすることを請求することができる旨が意匠法に規定されている。ウ 乗用自動車の形状は意匠登録できる場合はない。
エ 同時に使用される一組の飲食用ナイフ、フォーク、スプーンのセットの各々に
同一の模様を施したとしても、これらを一意匠として出願し登録することはできない。【解答】イ
経営法務の合格率の推移と難易度
年度毎の合格率の推移
年度 | 合格率 |
H29年度 | 8.4% |
H30年度 | 5.2% |
R1年度 | 10.1% |
R2年度 | 12.0% |
R3年度 | 12.8% |
経営法務の過去5年分の合格率は10%前後とやや低く推移しています。
特に、H30年では合格率が5.2%と非常に低くなっており、年度ごとで難易度が変動します。
▼下記の記事で全科目の過去8年分の合格率の推移をまとめています。

経営法務の難易度
経営法務の難易度は「高」です。
ビジネス法務検定や、宅建、行政書士、司法書士など法律関連資格の勉強をしたことがある方にとっては関連性が高い出題範囲があるので、時間をあまりかけずに合格ラインまで到達できますが、法律初学者や暗記が苦手な方にとっては非常に難易度が高く感じられるでしょう。
法律初学者にとって難しく感じられる点としては、法律用語の使い方にあります。
法律用語には一般的な言葉の意味合いと異なるものが多いため、慣れるまでに時間がかかります。
経営法務の合格までに必要な勉強時間は?
経営法務で科目合格を目指すために必要な勉強時間はおおよそ80時間〜100時間程度です。
経営法務は2次試験の出題内容には直結しませんから短い時間で50点から70点までの範囲で安定して得点できる状態を目指しましょう。
なお、中小企業診断士1次試験は、科目合格できなくても受験科目全体で60%以上の得点ができれば合格となります。
そのため、経営法務が苦手だからといって、経営法務だけに時間をかけすぎて他の科目に時間を割けない状態にはならないように注意しながら勉強していきましょう。
中小企業診断士 経営法務の勉強法とコツ
経営法務の勉強法とコツ①:勉強序盤はテキストと過去問を反復する
勉強序盤では、テキストの確認⇒問題集・過去問を繰り返しながら学習分野を進めていきましょう。
経営法務は暗記科目のため、過去問で出題された内容を繰り返し解いていくことで着実に点数が伸びるとともに、得点も安定しやすいのが特徴です。
経営法務の勉強法とコツ②:会社法・特許の出題範囲の正答率を高める
経営法務では会社法と特許(知的財産権)に関連する範囲が得点がしやすくなっています。
理由としては、会社法は過去問と比較的近い内容が出題されやすく暗記のみで対策が取りやすいためです。
逆に得点がしにくい範囲としては民法関連の問題です。
民法の問題は暗記だけでは解けない問題が出題されることが多く、数学的な論理的思考が求められるケースがあります。そのため学習効率が上がりにくく、習得までに時間がかかる傾向がありますので深追いしすぎないことがポイントです。
中小企業診断士 経営法務のおすすめテキストと過去問題集
経営法務のおすすめテキスト
おすすめのテキストはTACが出版しているスピードテキストです。
経営法務のおすすめの過去問題集
テキストと同じところが出版している過去問を利用するのがベターです。
また、分野別に知識を整理しながら勉強するには過去問と合わせて下記のスピード問題集を利用するのがおすすめです。
その他おすすめの参考図書
また法律の入門書で分かりやすいものとしては下記の書籍がおすすめです。
中小企業診断士の文字だけのテキスト等ではなかなかイメージしずらい「種類株式」や「会社の仕組み」について非常にわかりやすく、整理されてまとまっています。中小企業診断士だけではなく、その他の国家資格で会社法を学ぶ方にもおすすめの書籍です。
漫画の書籍でおよそ2時間程度で読み切ることが出来る分量ですが、本書のあちこちで重要論点にもしっかり触れられており、非常におすすめです。
経営法務を勉強する上での注意点
注意点①:テキストと過去問は古いものは利用しないこと
経営法務は必ず最新版のテキストと過去問を利用するようにしましょう。
理由としては、法律は毎年改正されていきますので、昨年までは正解だったものでも、今年の法令では不正解の内容となることがあります。
最新版の過去問では、当時の正解の選択肢とともに改正点について解説していますので、間違った知識で覚えてしまうリスクを無くすことができます。
注意点②:英文問題の対策には時間をかけない
経営法務では毎年、英文問題が出題されます。(直近では基本的に1問のみ出題)
配点も高くないことから、英文問題については英語が得意でない方があえて英語の勉強をする必要はありません。
対策としては過去問題を10年分ほど確認した上で、出題傾向と関連知識をさらっと学習する程度にとどめておくようにして、深追いしすぎないようにしましょう。
注意点③:2次試験との関連性は低いため、勉強時間はかけすぎないようにする
中小企業診断士で最も勉強するべき範囲は、2次試験でも出題範囲となっている3科目(企業経営理論・財務会計・運営管理)です。
経営法務は1次試験のみの出題となっているため、勉強時間をかけすぎるのも良くありません。
直前期を活用して、一気に暗記で追い込みをかける方針で勉強するのがおすすめです。
経営法務が苦手な方は通信講座の活用も検討しよう
経営法務がどうしても苦手な方は通信講座の利用を検討するのも一案です。
・テキストや過去問だけで文字のみで勉強してもなかなか理解ができない
・通勤通学時間を活用して苦手科目を克服したい
上記のような方におすすめの、中小企業診断士の通信講座はスタディング(STUDYing)と診断士ゼミナールです。
どちらもスマホで動画講義が見れてスキマ時間を活用して勉強が可能です。
詳しい比較は下記の記事にまとめていますので参考にしてみてください。

なお、スタディングは1科目からでも受講できるので、弱点の補強に1科目だけで受講するというのが筆者のおすすめです。
まとめ
【本記事のまとめ】
・経営法務の頻出論点は「民法・会社法・知的財産法」
・近年の合格率は低めの5%~10%台
・合格までの勉強時間の目安は80時間~100時間程度【これ以内の勉強時間で合格したい】
・勉強はテキスト+過去問を繰り返す【演習量と得点は比例していきます】
繰り返しにはなりますが、経営法務は暗記系科目で得点は過去問の演習量に比例し、かつ安定していきます。
試験前日まで得点が伸びる科目ですので、諦めずに取り組んでいきましょう。
