「行政書士って具体的にどんな仕事をしているの?」
「行政書士になったらどうやって仕事を取ればいいんだろう?」
「行政書士の仕事をわかりやすく解説してほしい」
上記のような方向けに、行政書士の方が具体的にどのような仕事を行っているのか解説していきます。
・元銀行員
・中小企業診断士や行政書士などの国家資格を複数保有
現在は、コンサルタントとして、クライアントのITにシステム導入に関するアドバイスなどを行っています。行政書士試験には、大学3年生で独学合格。
行政書士の仕事内容
行政書士の仕事の由来「代書屋」
行政書士の仕事の由来は、「代書屋」と呼ばれる本人に代わって書類や手紙等の代筆を行う職業です。
このような職業が始まったきっかけは、昔(近世以前)は識字率が低かったことことから、すべての人が手紙や書類を書けるわけではなく、教養のある人が代筆をすることが一般的だったことです。
そして、識字率が高くなってからも、専門的な手続きや書類作成は代書人が行っており、明治5年に司法職定制代書人制度が制定されました。
この司法職定制代書人制度を引き継いだのが、司法書士と行政書士というわけです。
<近世以前>識字率の低さから代書人という職業が誕生
<1872年>司法職定制代書人制度が法制化
<1920年>内務省令代書人規則等で法制化
<1951年>行政書士法が制定され、今日の行政書士となる
行政書士が行う仕事の範囲【司法書士との違いも解説】
行政書士 | 司法書士 | |
業務内容 | 都道府県・市区町村への提出書類の作成 | 法務局・裁判所への提出書類の作成 |
作成書類 | ・官公庁向け許認可の申請書類 ・権利義務・事実関係の証明書類 |
不動産登記 商業登記 訴状・告訴状 |
司法書士と行政書士は、同じ制度から始まった職業ではありますが、仕事内容は上記のように異なります。
行政書士は、都道府県・市区町村への提出書類作成、司法書士は法務局や裁判所への提出書類作成と申請書類の提出先が異なります。
しかしながら、相続関係、会社設立、民間契約書の作成などについては双方が同じ業務を行うことができることから、線引はやや曖昧な部分もあります。
よく知られている内容としては、「登記業務」については司法書士の独占業務であることで、行政書士は登記業務を行うことができません。
行政書士の業務一覧を紹介
<各種許認可の申請業務>
・建設業許可申請
・飲食店営業許可申請
・介護保険指定事業申請
・電気工事業者登録申請
・薬局許可申請
<各種契約書類作成業務>
・契約書・念書・示談書等
・内容証明郵便
・著作権契約
<外国人関係業務>
・戸籍の各種届出
・外国人在留資格認定証明書交付申請
・永住許可申請
<相続関係業務>
・遺言書
・相続人の調査手続き
・遺留分減殺請求
各種許認可の申請業務では、新しく仕事を始める方が必ず官公庁や市区町村に手続きを行わなければいけない書類を代わりに作成しています。
例えば飲食店を始めようと思った場合には、事前に申請が必要になりますが、申請の”コツ”なるものがあり、初めて開業する方は何も分からないまま手続きをしようとすると、書類や情報が足りずに出直しになってしまうケースもあります。
こういったことから、申請のプロである行政書士に申請のアドバイスをもらったり、代わりに申請書を作成してもらうことでスムーズな開業ができるということです。

行政書士の主要業務のランキング
既に行政書士である方、これから行政書士を目指す方に質問です。
現在メインで行っている業務又は資格取得後やりたい業務は何ですか?
リツイートで拡散していただけたら嬉しいです😆
— 川端隆広 (@officetakahiro) February 5, 2020
既に行政書士である方、これから行政書士を目指す方に質問です。
現在メインで行っている業務又は資格取得後やりたい業務はなんですか?
1位:建設業許可などの許認可(28%)
1位:遺言・相続手続き(28%)
3位:入管、国際業務
4位:その他業務
許認可業務や相続関係の仕事を行いたいという方の割合が多いようです。
たしかに筆者の身の回りの行政書士も、ほとんどこの2つの業務のどちらかはメイン業務としていますね。
行政書士は今後、仕事がなくなるのか?
行政書士の仕事はAIに代替される!?
士業 | AIによる 代替可能性 |
資格試験の 合格率 |
弁護士 | 1.4% | 25.9% |
司法書士 | 78.0% | 3.9% |
弁理士 | 92.1% | 7.0% |
行政書士 | 93.1% | 9.9% |
公認会計士 | 85.9% | 10.8% |
税理士 | 92.5% | 15.8% |
社会保険労務士 | 79.7% | 4.4% |
中小企業診断士 | 0.2% | 3.4% |
(注)AIによる代替可能性は2015年12月公表の野村総研と英オックスフォード大との共同研究による「10~20年後に、AIによって自動化できるであろう技術的な可能性」。資格試験の合格率は弁護士が2017年、その他は2016年。中小企業診断士の合格率は1次試験と2次試験の合格率を乗じたもの。【出典】日経新聞
行政書士は士業の中でも最もAIによって自動化できるであろう技術であるとの、研究結果がでています。
つまり、今後生き残っていく行政書士となるためには、AIに代替されうる業務以外の領域にも手を伸ばしていくような、積極的な姿勢が求められそうです。
行政書士の仕事は飽和状態にある
平成29年度時点の行政書士登録者数:46,915人
単純計算で各都道府県に1,000人の行政書士がいることになります。
※もちろん都市圏に集中しています。
行政書士試験の合格者は毎年4,000人~6,000人となっています。
そして、平成27年度の調査では、合格者数が5,820人で、弁護士試験に合格した人などを除いて行政書士試験に合格して新規登録した人は1,782人、行政書士試験に合格して登録していたが廃業した人が1,014人となっています。
単年度だけの数値ではありますが、開業した人と廃業した人の比率を考えると約半数が廃業していることになります。
このような状況の中で、毎年行政書士の登録者数は増えていっており、飽和状態であることがわかります。
行政書士の仕事はなくなるのか?
結論、行政書士の仕事は当分なくならないと予想しています。
理由は行政書士の仕事は「専門性×対人能力・コンサル」で成り立っているからです。
AIに取って代わられるのは書類を代わりに申請するなかでの、定型的な業務のみであり、クライアントが持っている複雑な問題・課題を解決できるのは対人能力やコンサルティング能力だからです。
つまり、”代書屋”として書類を代わりに申請するという単純な定型業務のみを行っている行政書士は時代の流れとともに淘汰されますが、顧客の真の課題を解決していく行政書士は今後も生き残っていくでしょう。
行政書士の仕事の取り方は?【手順を解説する】
手順①:行政書士試験に合格する
手順②:得意分野・専門領域の明確化
手順③:HP・SNSから集客
手順④:新分野の開拓
手順①:行政書士試験に合格する
まず、行政書士の仕事を始めるためには行政書士試験に合格しなければ始まりません。
行政書士試験は合格率が8%~15%の難関国家資格ですので、しっかりと時間を取って対策しましょう。
行政書士試験の勉強をこれからスタートする方は下記の記事から、勉強法を身に着けていきましょう。

また、短期間で効率的に合格するには、通信講座を活用して勉強すべきです。

手順②:得意分野・専門領域を明確にする
行政書士試験に晴れて合格したら、行政書士として得意分野・専門領域を決めて地域の中で、「〇〇業務といえば、△△行政書士事務所」と認知がされるようにしましょう。
行政書士試験の勉強だけでは、ほとんど実務的な知識を学習することができません。
たとえば許認可手続きの申請などは、実際に官公庁や市区町村への申請業務をおこなってこそ生きた知識となります。
※もちろん、開業して間もない頃は、まずは日々の生活を送れるように生活費以上を稼げる必要があるのでこの段階では業務を敢えて絞る必要はありません。
そして、この得意領域・専門領域を決める際には、専門領域の掛け算を意識するようにしましょう。
たとえば、「英語×行政書士」・「司法書士×行政書士」・「飲食店経験者×行政書士」。
このあたりは自分のこれまでの社会人経験を踏まえて、他の行政書士と差別化できる経験が必ずあるはずなので、しっかりと自分自身を見つめ直しましょう。
手順③:HPやSNSから顧客を見つける
得意領域と専門領域を決めたら、HPやSNSによって顧客の新規獲得を目指します。
現代において、この2つを利用しない手はありません。
むしろHPやSNSを利用しない場合は地域の中のお客様しか獲得することが出来ないため新規顧客獲得に苦労します。
たとえばSNSを活用すれば、別の都道府県からの依頼を受けることが出来たりしますし、英語でSNS発信すれば、外国人から在留資格認定の申請手続きを依頼を受けられるかもしれません。
手順④:新分野の開拓を行う
行政書士として、自分の得意分野を1つだけに絞ることは、今後AIが発展していくことを考えると、非常にリスクが高いです。
得意分野を決めて集客に成功したら、それに慢心せずに別分野の業務も広げましょう。
近年では、ドローンやマイナンバー制度など新しい法令が増えてきています。
こういった新しい法制度ができたときこそ行政書士にとってはチャンスです。
新しい法制度ができれば、その要件をくぐり抜けるための申請が必ず必要になりますし、まだ他の行政書士が取り組んでいない分野のため新しいビジネスチャンスとなります。
ニッチな新領域を獲得することで、新しい時代に生き残れる行政書士を目指していきましょう。
手順①:行政書士試験に合格する
手順②:得意分野・専門領域の明確化
手順③:HP・SNSから集客
手順④:新分野の開拓
▼行政書士をこれから勉強する方向けの記事

